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山地(やまち)酪農とは?

広大な牧山に放牧された乳牛が、四季を通してシバを中心に野草と湧水を求めて食い、歩き、休み、食み返し、生活しています。

● "日本の山地酪農"の呼称について

 

 日本の山地酪農創始者 猶原 恭爾(なおはら きょうじ)博士(理学博士)が人生を通して、日本の植物の踏査研究をする中で、酪農の先進国には見られない、穀作国ならではの植物相の厚さを知りながら、実際にはそれが生かされなていない現実に疑問を抱き、日本では独自の豊かな植物ゆえの酪農ができるはずと考えたのでした。

 実際に10年間の乳牛飼養試験の後、平地の少ない日本(国土の70%が山地の日本)で、20~30㌶の傾斜地を活用すれば、平地の水田で求めようとした創造性・安定性・永続性を備えた農家に勝るとも劣らない安定酪農家を、創設できる自信を得た時、同時に呼称も敢えて「日本の山地(やまち)酪農」としたのでした。言い換えれば日本型放牧酪農なのですが、酪農のイメージや実際が余りにも平地的なのと、山地傾斜地の活用を視野に入れることで、大いに日本の将来が明るくなるので、山地(やまち)酪農にしたのだそうです。かつて林業か炭焼きしか方法がなかった山で、高級食糧の創造的供給と、繁栄農家の創設と言う希望は、猶原博士の民族の源泉を培う意識を大いに揺さぶったのでした。

● 酪農の常識を超えた日本の山地酪農

1.餌の問題
 日本には酪農に限らず、畜産として家畜や家禽が飼養されていますが、残念な事にそのほとんどは、効率農業で、外国からの輸入飼料依存型なのです。BSEで有名になった肉骨粉は極端にしても、日本ではかなり前からイワシやサンマ、タラ等、大漁貧乏になりそうになると、飼料用に使用してしのいで来ました。日本の畜産人に、動物性の餌に対する違和感はほとんど無いのが現状です。草食獣の乳牛や肉牛にも当たり前に使ってきたのです。草食動物は動物性の餌は絶対に口にしません。それがどうして食べるようになるのでしょう。それは気が付かない程度、少しずつ食わせて行くのです。徐々に増やせば気が付いた時には、魚肉食の牛が出来ているという仕掛けです。 じゃあ何のためにそんな事をするのでしょう。それはマサに効率農業なのです。草だけ食わせて置けばせいぜい年に3,000㎏~4,000㎏しか出ない牛乳が、穀物飼料を給与して5,000~6,000kgは当たり前、7,000~8,000㎏も牛乳が出るようになったのです。 日常会話では、「㎏・50円の飼料を買って食わせて、㎏・70円から80円の牛乳が搾れれば損は無いよ」と言ったものです。まして動物性の飼料を配合した飼料を給与すれば、もっと楽に増量が期待でき、日本の現在の平均泌乳量は9,000kg以上になっているのです。10,000~20,000㎏以上搾っているスーパー牛を自慢の農家も沢山あるのです。

2.土地の問題
  有機農業が盛んに叫ばれてきた頃、輸入飼料に多くを依存している日本畜産の現状では、日本独自の有機基準を作りたくても、そもそも土地・大地に依存していない日本型は有機的な基準の対象外です。それではと言う事でアメリカが自国の有機認定の飼料(草も穀物も)を輸入して使えば、日本でも国際基準をクリアーした畜産品として、認定しましょうと言う事になったのでした。これはマサに不自然に不自然を重ねて力でひねり出すやり方で、どうしても納得できませんでした。日本が砂漠地帯なら兎も角、立派に自然条件に恵まれた、植物豊かな国であるにも拘わらず、なぜそういう事になるのでしょう。水田や畑作の有機基準で考えれば理解できるはずです。水田や畑で作るから稲作であり、畑作なのです。その水田に使っている薬を減らしたら減農薬だし、無使用なら無農薬です。肥料もそうです。減化学肥料か無化学肥料です。それを3年間、特定の第三者に確認してもらえば、有機農家とか、準有機農家になるのです。  ところが畜産の世界は違うのです。都市近郊型は特にそうですが、一坪の農地も持たない農家が牛乳を生産したりしているのです。また地方でも飼っている頭数を自前では到底まかなえないほどの頭数を飼っているのは当たり前です。従って畜産に付き物の糞尿公害が、還元する場所が無いために生まれるのです。  これは農家に責任はありません。こう言う加工型の畜産を奨励してきた事に最大の原因があるのです。しかし、ここで責任の追及をするつもりはありません。 水田や畑作のように依存している大地が無い日本畜産は、輸入して食わせている飼料が、有機基準の認定を受けていたら、有機農業だということになってきたのです。  ここまで来たら、私たちは有機認定に興味がなくなりました。 30年来やってきた事を、独自の規定を作って、後世の口にする方々に約束をして、安心して飲んで頂き、食べて頂くことにエネルギーを使いたいと思いました。現在の田野畑山地酪農牛乳の生産者規定は、国際的に見てもトップクラスの規定だと自負しています。ついでに申しますと、飼料を輸入して食わせて、その糞尿に含まれる飼料の残効(消化されないで糞尿に出ている分)が、大地に還元されない無駄は、無駄に無駄を生む悪循環で、金額に直せば相当なものでしょう。大地に根差すとは、そういう無駄が殆んど出ないということです。生産者規定と解説をご参考にされたし。

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